*

死にゆく運命と言われても・・・の巻

[東京 8日 ロイター] – 民間の有識者による日本創成会議(座長:増田寛也東京大学大学院客員教授、元総務相)の人口減少問題検討分科会は8日、「全国1800市区町村別・2040年人口推計結果」を公表した。

これによると、地方からの人口流出が続く前提で、2040年にまでに若年女性(20─39歳)の人口が50%以上減少し、消滅する可能性がある市区町村は全国に896あり、なかでも人口が1万人未満で消滅の可能性が高い市町村は532にのぼるという結果となった。全国の1800市区町村を対象に、人口移動を前提にそれぞれの地域の人口がどうなるかを推計した調査は初めて。全体のほぼ半数の市区町村が消滅の可能性があるという事実が明らかになった。

 

遅かれ早かれこのようなことになってしまうとは想像していたけれど、改めて数字で表されると、やっぱり落胆が大きい。とても生意気な物言いなので少し気が引けるが、東京に暮らしていて、ずっと感じていたことだし、ここ数年、都会の喧騒が嫌になり、静かな所を求めて車で彷徨うことが趣味になってからは、肌で感じていた。

東京で出会う人の半数以上が東京以外の出身者であること、親の代や祖父母の代までさかのぼると、純粋な東京出身者は更に少なくなること・・・。そして、少しでも東京から離れると、平日の昼間に道行く人の数が極端に少なくなること。商店街の名残を残す町並みの多くがシャッターで閉ざされていること・・・。

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いつかはこうなってしまうのではないかと感じていた。

 

幸か不幸か、私は江戸人の家に生まれ、高校時代までは、自身と大体同じような環境の人達の元で育って来たが、大学に入学して初めて、東京以外のカルチャーを持つ人と接したというお恥ずかしい程の井の中の蛙であった。

江戸人気質の曽祖父母や祖父母の影響を非常に強く受け、江戸=東京ほど良い所はないと思っていたし、大人中心に事が運ぶ家だったこともあり、子供のことを考えて、家族旅行をするなど、滅多矢鱈なかったため、頭も心も非常に偏った人間に成長していた。

虫も数種のとんぼと蝉くらいしか知らない、蝶は燐粉が気持ち悪い、花の名前も知っているものは両手で数えられる程度、木に至っては片手が余り、土いじりの体験も、小学校の遠足で行った川越の芋ほりのみ・・・。

 

図体ばかりが大きいくせに、所詮、都会のもやしっ子でした。(死語)
これで、今更ながらに潮干狩りの楽しさに気付いたということにも納得して頂けることでしょう。

 

幸いなことに、父が海外と取引をする仕事をしていたせいか、海外には早い時期から興味を持つようになり、渡航の初体験も早かったので、東京だけに留まることは免れたが、通常であれば、東京→東京以外の日本国内→海外 (もしくは東京以外の国内→東京→海外)というように進むステップの中で、真ん中の大切なステップを踏み外した。

英語圏との交流を経た後、英語以外の言語を話す国としてイタリアを選択し、かなり大人になってからイタリアへ留学した。私が選んだ留学先の私立語学学校はミラノとローマ。なんとも当時の私らしくて嫌になるが、日本で言うならば、東京、大阪の2大首都圏。留学はこの2都市に半年ずつの予定であったが、最後の方は学校へ通うのを自主規制し、できる限り地方都市を自分で回ってみて、行く先々で外国に来たのかと見まがうほど、風景がガラリと変わることに驚愕した。

そして、帰国後、縁あって、仕事でイタリアの地方都市に足繁く通うようになり、彼の地で、首都圏以外の自分の出身地を自慢し合う習慣に始めて出会った。もちろん、私は東京というよりも江戸を愛していた家族の影響で江戸を愛する心は身に着けていたが、その東京で出会う東京以外の出身の人々の多くが、自分の出身地を隠したり、出身地を悪く言う状況に慣れていたため、イタリア人の『お国自慢合戦』にとても新鮮な驚きを覚えた。イタリアの街は、建物が石で作られていることもあり、また法律などで街の外観を変えることが厳しく制限されているために、街の建築物や道路などが中世のまま残されている場所も多く、また、街の景観を守るために、そこに暮らす人々、そこで働く人々、そこに訪れる人々に不便を強いている。また、その不便を街全体のために受け入れている人が多かったような気がする。

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中部イタリアの都市ペルージャの車両全面通行禁止にされている歴史的中心街

 

一方、江戸が東京に生まれ変わって約150年。その150年の間に、政治状況、経済状況が目覚しく変わり、私が生まれた上野不忍池近辺は、歴史的建造物がかなり多いエリアであるために、かなり昔の趣が残されているエリアも多いし、私が通った寛永寺幼稚園もそのまま残されているが、周辺は、高層化され、様変わりしている。東京は江戸時代の頃から地震や大火、明治時代の文明開化、そして第二次世界大戦の際の空爆によって破壊されているため、江戸情緒が残っているのは、ごく一部の歴史的建造物と、口伝によって伝えられた文化が人間の頭の中のみになった気がする。例えば、江戸、明治、大正、昭和の文化を垣間見ることができる当時描かれた絵や、当時書かれた書物や落語などに触れても、曽祖父の話、祖母の姿を思い出すだけで、伝統や風習が立体的になり、その時代の様子が容易に想像できたりする。

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明治36年の不忍池
<写真 国立国会図書館>

 

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現在の不忍池
<写真:江戸観光案内>

 

1964年、今から50年前にオリンピックが開催されたことにより、東京は、道路、鉄道などのインフラが整備され、高層の建物も建築され、一気に戦後ムードから脱皮した。そして、2020年、今から6年後に再び東京でオリンピックが開催され、さらに東京は未来都市化してしまうのかもしれない。

ただ、50年前と明らかに違うのは、折れ線グラフが進む方向が上方ではなく、下方であることである。Y軸の単位を、『円』にした場合のことはさておき、Y軸の単位を『人』にした折れ線グラフは、明らかに当時とは異なっている。私の個人的なことを考えてみれば、『円』の折れ線グラフを右肩上がりにすることには少しだけ協力できたかもしれないが、『人』のグラフでは、全く貢献できなかったので、申し訳なかったなという反省もふまえつつ・・・。

 

昨年、私は、自分の人生の大幅な方向転換を決意し、ビジネスパートナーと二人で新たなことをやっていこうと考えた際に、日本国内の発展と衰退のバランス調整のために何か役に立つことはできないかと考えた。偶然にも、我々二人ともが、内外から注目されている東の首都圏、西の首都圏の出身であり、我々のようなちっぽけな存在が何かをしなくても、どんどん発展していくわけだから何もすることがない。しかしながら、地方から首都圏へ人が移動するというベクトルは、我々ごときが何をしようとも止められるはずがない。教育施設を作ることもできなければ、労働市場を作ることも不可能である。

我々が唯一できることは、地方に眠っている魅力を『よそ者』として発見し、それをより多くの人間に伝えることであろうと思った。魅力ある場所には人が集まる。人が集まれば、何かが生まれる。そのきっかけ作りになるようなことができれば、人口増加に貢献できなかった罪も許されるかもしれないと思ったのかもしれない。

日本人の良い所は、謙遜の美徳であり、謙遜の美徳があるからこそ、自分のことや自分が住む場所、自分が作る物を自ら素晴らしいと言うことには遠慮が生まれてしまう。

『それでは自己アピールしてください!』などと言われても、うまく言えないことこそが日本人の美徳であるから、誰か第三者が言う必要があると思ったのである。ただのお節介なのかもしれないが、我々にはこれしかできない。何かプラス・アルファを少し付け加えるとすれば、海外での生活経験があったり日本語以外の言語ができたりすることであろうと思ったので、日本人による日本の地方都市自慢や地方文化自慢をして、国際的にその魅力をアピールしていこうと決意した。

『都会』と『田舎』という言葉はあまり好きではないので、使うことに気が引けるが、敢えて使ってみると、『都会』の人間が『田舎』に憧れ、『田舎』の人間が『都会』に憧れるという図式は、教育や、仕事という生きていく上での必要条件を手に入れるためであるということとともに、隣の芝生は青く見えてしまう『ないものねだり』もあるのかもしれない。

『田舎』という言葉が嫌いなのは、それぞれの地域が『田舎』と一括りにはできない、それぞれの特徴や良さを『田舎』という言葉が消し去り、おまけに悪いイメージまで添加してしまうからである。

 

ところで、イタリアの有名な観光地に、『死に行く街』と呼ばれている街がある。

白ワインで有名なイタリア中部の街、オルヴィエートから車で30分、ローマからだと車か電車で2時間圏内、まさに2 Hours Drive From Romaという立地にある村で、もしかすると、かの有名なアニメ、『天空の城ラピュタ』を髣髴とさせる村ということで有名かもしれない。それはチヴィタ・ディ・バーニョレッジョ (Citta’ di Bagnoregio)という、古代ローマよりもさらに前のエトルリア時代、紀元前に作られた町である。

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チヴィタ・ディ・バーニョレージョ (Civita di Bagnoregio)
<写真はウィキペディアより>

 

名前の中にあるバーニョというのは、日本語でお風呂という意味。そう、温泉が湧き出る火山地帯であり、この町は、何度も大地震によって崩壊している。(どこかの国と状況は似ている。)そして、1764年に起きた大地震で、チヴィタと近隣の村を結んでいたたった一つの道も崩壊してしまったという、住み続けたくても住み続けることが容易でなかった町だ。事実、村の歴史と伝統を守り抜こうとする住民は残ったものの、役場や教会、お金に余裕のある人々たちは隣町に移住。その後も、人々の移住は止まらず、現在の人口は30人以下であるという状態・・・。

『死にゆく街』という名前がついたのは、今から約20年ほど前のようだが、現在は、村の修復も少しずつされ、徒歩でなら通行できる橋の建設も完成され、観光スポットとして人気が高まっている。

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高所恐怖症だとちょっと足がすくむ橋。
しかしこの村に行く道はこれ一本。
<写真はヴィテルボ観光協会>

 

日本でも、今後30年以内に消滅する可能性がある町が正式に発表されてしまった今、その場所を愛する住民の方と、その町を愛するよそ者の力を合わせて、消滅する前に復活させることも不可能ではないと思う。

ただやみくもに、妊娠可能な年代の女性に産めよ増やせよと言うよりも、人口が集約されている場所から移動してもらう方が早いような気がする。

事実、我々も、移住をするならここ!という場所を既に決めてある。

 

この先、日本国内に住む日本人の絶対数が少なくなり、恐らく、都会に必要な第三次産業における労働力の需要も少なくなるに違いない。少し調べてみると、東京の飲食店数も減少傾向にあるらしいし、インターネット通販に押されて、小規模の商店数も減少傾向にあるらしい。

とすると、やはり力を入れるべきは、第一次産業!農業・漁業・林業であるに違いない!
そして、地元の特色や伝統を活かした物の生産だと思う。

なんとなくだけれど、工業においては、どんどん人間のする仕事は機械化されていくような気がしてならないし、資本主義経済が続く限り大規模生産を行う拠点は人件費の安い国へ安い国へと移動していくような気がしてならない。

江戸人の末裔としての意見を言わせて頂ければ、東京が江戸でなくなってしまったことは、もう仕方のないことだと諦め、江戸を全日本代表都市として捧げることには同意するけれど、魅力ある地方の町や村には、元気を取り戻し、その姿を維持して欲しいと本当に願っている。

そのために、我々が何かの力になれることを祈りつつ。

西園寺怜

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